コミュニティーガスの解説
メリットデメリットコミュニティーガスの解約

このページでは、コミュニティーガス(旧簡易ガス)について解説しています。

そもそもコミュニティーガスとはどんなサービスなのかという部分から、メリットやデメリット、変更方法などを記載しています。

現在コミュニティーガスを利用中の方、これから引越す方もご参照ください。

集合住宅のコミュニティーガス
このページでは、主に「戸建住宅に供給されるコミュニティーガス」について解説しています。集合住宅でも70戸以上の場合にはコミュニティーガスの扱いになりますが、戸建住宅とは内容が異なります。
参照:集合住宅のコミュニティーガス

コミュニティーガスってどんなサービス?

コミュニティーガスの解説
地下の導管を通じてプロパンガスが供給される

ガス事業法第2条第3項にて、コミュニティーガス事業は次のように定義されています。

ガス事業法に基づき許可を受けた簡易ガス(現コミュニティーガス)事業者が、「一般の需要に応じ、政令で定める簡易なガス発生設備(特定ガス発生設備)においてガスを発生させ、導管によりこれを供給する事業であって、一の団地内におけるガスの供給地点の数が70以上のものをいう。」

ガス事業法第2条第3項

簡易的な設備(ガスタンク)から供給する団地内の「供給地点」つまり「顧客数」が70を超えるとコミュニティーガスになります。

集中プロパンとは似ているが別もの
コミュニティーガスは、一般に「集中プロパン」と混同されることもありますが、両社は定義が異なります。
各戸で個別にボンベを設置しないガスサービスという点では共通していますが、コミュニティーガスは許可制であることなど両社は異なるサービスです。

このページでは、コミュニティーガスについて解説していますが、集中プロパンにも共通する事項が含まれています。

コミュニティーガスのポイントは、以下の4点です。

供給するには「コミュニティーガス事業者」として認可が必要

コミュニティーガスを供給するためには、経済産業省の認可が必要です。

コミュニティーガスを専業で営んでいるという事業者はなく、プロパンガスや都市ガスの事業者がコミュニティーガス事業も行っています。

簡易的なガス発生設備から「導管を通じて」需要家へ供給される

「簡易的なガス設備」とは、ガス基地で見られる巨大なガスタンクほど大きくなく、よく見かける一般宅に設置された個別のボンベほど小さくはない、中型のガスタンクです。

団地や集合住宅の一角に設置されているものを見たことがある方もいるかもしれません。

LPガスは、各戸にボンベを設置し、そこからガスを供給します。都市ガスは、簡易的なガス設備がなく、すべて導管を通じて供給されます。

ガスタンクから供給される
それに対しコミュニティーガスは、近くに中規模のガスタンクがあり、そこから地中に埋設された導管を通じて供給されるという特徴があります。

70世帯以上のまとまった区域に対し、1事業者が供給するサービス

ある程度まとまった顧客がいない限りコミュニティーガスの供給はできません。

後からコミュニティーガスに変更するのではなく、住宅建設の段階から「この区画はコミュニティーガスにする」と決めた上で進められるのが一般的です。

計画的に開発された住宅地で多い
従って団地やニュータウン、もしくは大規模な集合住宅など、計画的に開発された住宅地では、コミュニティーガスの割合が高くなっています。

供給されるガスの中身は、ほとんどの場合プロパン(LP)ガス

簡易ガス供給図
供給図

例外はありますが、コミュニティーガスで消費者に供給される「ガスの中身」はプロパンガスです。

コミュニティーガスとは供給形態の一つ
つまりコミュニティーガスとは、プロパンガスや都市ガスのように「サービス名」を指すのではなく、ガスがどのように供給されているのかを指す「供給形態のひとつ」なのです。

プロパンガスというと「家の脇にボンベがある」という印象ですが、コミュニティーガスの場合には一戸一戸ずつボンベが設置されるのではありません。

前者・一般のプロパンガス供給を「ボンベ供給方式」と呼ぶのに対し、一般的なコミュニティーガスの形態を「バルク供給方式」と呼びます。

供給方式の例外
コミュニティーガスでも、ボンベを一か所に集めて供給するボンベ供給方式を採用しているケースもあり、すべてがバルク供給方式を採用しているのではありません。
逆にコミュニティーガスではない(70戸未満の)集合住宅や団地でもバルク供給方式を採用していることもあるので「バルク供給方式=コミュニティーガスの供給方式」ということではありません。
数としては少ないですが、コミュニティーガスの方式で都市ガスが供給されている住宅地もあります。

コミュニティーガスの長所

コミュニティーガスは安いことが多い
コミュニティーガス料金は安い

コミュニティーガスのメリットとして、第一に「料金の安定」が挙げられます。

一般のプロパンガス料金は法規制されていないのに対し、コミュニティーガスの料金は経済産業省の認可料金となるため、事業者が勝手に決めることができません。

プロパンガスの場合、「知らない間に料金が高くなっていた」ということがよくありますが、コミュニティーガスは規制されているため、そのような事業者の横暴は許されません。

利用者としては、理不尽な料金の変動に心配する必要がなく、安心して利用することができるといえます。

コミュニティーガスは一般的に料金が安い
料金が安定するだけではなく、コミュニティーガスの料金は多くの場合、安く設定されています。
それぞれの供給区域によって差はありますが、総じてコミュニティーガスの料金は安い傾向にあります。

配送コストが安い

料金を下げることができる要因は供給方式にあります。

配送コストの低減
一般のプロパンガスは、お宅ごとにボンベを設置し、担当者が毎月ボンベの交換作業を行う必要があります。対してコミュニティーガスは、まとめられた一か所にのみ補充を行えばよいので、事業者としては手間を省くことができます。
配送の手間を大幅に省略できるため、低価格での供給を実現できるのです。

それ故、特に「都市ガスが整備されていない地域」では、計画段階で「この団地はコミュニティーガスにしよう」と決めたりすることがあります。

コミュニティーガスが必ず安いとは限らない
ただし、コミュニティーガスにおいてもかなり高めの料金で設定されている地区も存在します。
「料金が安定する」という意味でメリットは大きいのですが、「変動しても構わないのでガス代を安くしたい」と考えている方は、通常のボンベを設置するLPガスに変更することによって価格を抑えることが可能です。

顧客数を確保できる

その他にも「まとまった顧客数を獲得できる」という点で、事業者の方にも大きなメリットがあります。

切り替えのリスクが低い
個別での供給では、他社に切り替えられてしまう可能性を常に秘めています。一方でコミュニティーガスは、簡単に切り替えることは不可能なため、顧客が他者に流れてしまうリスクが非常に少ないといえるでしょう。

つまりガス会社としては、「安い料金を設定しやすい」のです。

その他、プロパンガスの高い汎用性を生かして、災害などの緊急時に比較的早い復旧が見込まれることもコミュニティーガスのメリットとして挙げられます。参照:プロパンガスの解説

コミュニティーガスの短所

コミュニティーガス事業者を変更するのは難しい
コミュニティーガス事業者を変更するのは難しい

コミュニティーガスのデメリットは多くありませんが、事業者の切り替えができないということが挙げられます。

ガス会社の変更が難しい
下の項目に記すように厳密には事業者を切り替えることは可能ですが、「コミュニティーガス事業者」を変更するのは実質的に難しい作業です。

コミュニティーガスは、ガス設備から地中に整備した導管を通して、各お宅へと供給されます。

このうち、ガス設備はもちろん事業者の所有物となり、さらに各お宅へとつながる地中の導管もガス会社の所有物となります。(敷地内のガス管は、顧客の所有です。)

コミュニティーガスを変更するとしたら
もしもその地区のコミュニティーガス会社を別の会社へと変更する場合、それらの設備を丸ごと新しい事業者が買い取る必要があります。
さらに「売るか、売らないか」の判断は所有している事業者の判断となります。自然に考えると、ガス会社が「70件以上のまとまった顧客」と「自社で投資して整備した導管などの設備」をわざわざ他社へと売り渡すという判断をするとは考えにくいでしょう。

例えばその団地内で自治会のようなものがあり、「会員の50%以上の賛成でガス会社を変更できる」というような決め事があるようでしたら変更することは不可能ではないでしょう。

そのような決め事が無い場合には、「コミュニティーガスの事業者」を変更することは、不可能に近いと考えられます。

仮にその事業者とお客様の間でなにかトラブルが発生したとしても、会社を変えることは難しいでしょう。

個人の意思では、容易に会社を切り替えられないのがデメリットであるということができます。

コミュニティーガスは変更できるのか

コミュニティーガスからLPガスへ切り替えはできる
普通のプロパンガスに変えることはできる

「コミュニティーガス事業者」から「別のコミュニティーガス事業者へ」と切り替えるのは、難しいかもしれません。

ただ「コミュニティーガス」から「一般のプロパンガス」へ切り替えることは可能です。

普通のプロパンガスに変更する
つまり導管から供給されるコミュニティーガスを解約して、一般のプロパンガス利用宅と同じように自宅の横にボンベを設置し、そこから供給する形に変更することになります。

事例としては多くありませんが、少なからずメリットがあるため、このような変更をする方もいらっしゃいます。

コミュニティーガスからプロパンガスへ変更するメリット

LPガスは設備投資のサービスができる
LPガスは設備投資のサービスができる

コミュニティーガスは、ガス供給以外の設備に関する投資などは行われません。

一方のプロパンガスでは、事業者によってはエアコンや給湯器・コンロなど、宅内の設備を無償で提供するというサービスを行っています。

つまり交渉次第では、宅内の設備投資を受けられるのです。(ただし、そのぶん従量料金が上げられる可能性や、長期契約を結ぶ必要性があります。)

このサービスに魅力を感じて、なお且つ料金の安さよりもその方が重要だと判断された方は、一般のプロパンガスサービスへ切り替える方もいらっしゃいます。

特に所有している物件を第三者に貸し出しているオーナー様に多い事例です。

コミュニティーガス料金が高い場合
コミュニティーガスであっても、「必ずしも通常のプロパンガスよりも安い」とは限りません。
地域によっては、コミュニティーガスよりもプロパンガスの方が安い価格を実現しているので、「料金が安くなる」ことを目的にプロパンガスに変更するというケースも少なくはありません。

切り替えた際の料金についてはこちらのページをご覧ください。

参照ページ:プロパンガス料金表

コミュニティーガスを解約するデメリット

コミュニティーガスから普通のプロパンガスへと変更することで、上述したような「料金の安定」というメリットを失うことになります。

一般のプロパンガス料金は「交渉できる金額」ですので、絶対にプロパンガスの方が高くなる訳ではありませんが、「変動を気にしなければならない状況」になるでしょう。

また導管から供給されるコミュニティーガスを解約することで、ボンベが設置されることになります。気にしない方は問題ありませんが、外観を気にされる方は慎重な判断が必要です。

コミュニティーガスまとめ

コミュニティーガスの解説は以上です。

コミュニティーガスは、特に料金面で大きな利点を持つサービスです。コミュニティーガスを利用中で解約を検討している方は、くれぐれも慎重にご判断するようご注意ください。

それでも検討しようという方は、当社へご相談いただけましたら、地域でもっとも安いガス事業者へと取り次ぐことができます。

コミュニティーガスについてのQ&A

コミュニティーガスとはどのようなサービスですか?

コミュニティーガスは、複数の世帯に対して一括でプロパンガスを供給するサービスです。中型のガスタンクから地中に埋設された導管を通じて、各家庭にガスが供給されます。大型の集合住宅や団地などで利用されることが多いサービスです。

コミュニティーガスのメリットは何ですか?

コミュニティーガスのメリットは以下の4点が主なものです:

  1. 料金の安定性 – 経済産業省の認可を受けているため、事業者の恣意的な値上げが抑えられます。
  2. 配送コストの削減 – ガスタンクの一括補充で配送コストが抑えられるため、料金が安く抑えられることが多くなっています。
  3. ボンベ交換が不要 – 各家庭で定期的にボンベ交換をする必要がありません。「ガス切れ」が起こる可能性が個別で供給されるプロパンガスよりも低くなります。
  4. 顧客数の確保 – まとまった顧客数を獲得できるため、事業者にもメリットがあります。

コミュニティーガスのデメリットは何ですか?

コミュニティーガスのデメリットは以下の2点が主なものです:

  1. 事業者の変更が難しい – ガス設備や導管が事業者の所有物のため、簡単に別の事業者に変更できません。
  2. 料金が必ずしも安くない – 地域によっては、コミュニティーガスの料金がプロパンガスよりも高い場合があります。

コミュニティーガスから一般的なプロパンガスへの切り替えは可能ですか?

はい、コミュニティーガスから一般的なプロパンガスへの切り替えは可能です。ただし、賃貸住宅の場合には、オーナーの許諾が得られない可能性もあります。

コミュニティーガスは集合住宅でも供給されていますか?

はい、コミュニティーガスは集合住宅でも利用されています。ただし、70世帯以上の大規模な集合住宅や団地に限られ、それ以下の小規模な集合住宅では利用できません。

著者:土勢育孝

この記事は、私が作成しました。

静岡県出身。エネルギー業界に10年以上携わり、特にプロパンガスや都市ガス、電力を専門にしています。またウェブサイトや記事も自身で作成します。ご意見や感想、指摘などありましたら、気軽にお寄せください。⇒著者情報