東京ガスの100%子会社・東京ガスリキッドホールディングス(リキッドHD)と、傘下のLPガス会社・東京ガスエネルギーは、8月28日にLPガスの緊急保安業務の研修施設「ガスクル緊急保安研修センター」を千葉県成田市の東京ガスビル内に設立・開校しました。LPガスに特化した研修施設としては日本初となります。
リキッドHDは、2016年10月にLPガス元売り最大手のアストモスエネルギーと業務提携を行う方針で合意しています。それに伴い、「高い保安レベル」や「競争力のある物流網を備えたサービスネットワークの構築」を目標事項に掲げており、今回の研修センターの開校もその活動の一環となります。
この研修センターは、東京ガス系列の企業のみではなく、他のLPガス事業者にも広く開放する予定で、業界全体の保安レベルアップにもつなげていく考えです。ただ、当然ながら同社系列の企業規模も狙いとしており、顧客への安心感をアピールすることによって、需要家数を増やしていく方針です。
施設には講義スペースのほか、屋外にはロールプレイングを行う実習施設を備え、全5日の研修カリキュラムを用意しています。これらの研修によりLPガス緊急保安エキスパートを養成し、東京ガス系列企業の持つ「安心感」をさらに強化する見込み。
近年では、技術の進歩によりガス事故は減少傾向にあります。しかし、消費者にとっては、ガス会社を選ぶ際、料金と同時に「安心して利用できるかどうか」ということも大きな判断材料となっています。ガス事故と一言でいっても実は様々なケースがあるため、対応できる人数は減っている状況です。今回の取り組みはそのような業界の流れに歯止めをかけることになるかもしれません。
また、LPガスの大きなメリットとして、緊急時の復旧に強いことが挙げられます。実際に都市ガスに変更できるお宅でも、災害時を考えて、あえてLPガスを利用しているお宅も多くあります。
料金よりも安全性という考えの顧客にとっては、非常に意味のある取り組みであるといえるでしょう。
しかし一方では、ほとんど起こる可能性のないガス事故よりも、料金を重要視する消費者は増えています。このような消費者からすれば、安全性はもちろん大切だけど、料金をもっと安くしてほしいというのが本音でしょう。
ガス業界全体では、LPガス離れが進んでいる中で、今回のような取り組みがどこまでの意味を成すのかに注目が集まります。