このページでは、プロパンガスに関する火災などの事故について解説しています。
電気と比べて危険とも言われるガスですが、実際にはどうなのでしょうか?
現在プロパンガスを利用している方はもちろん、引越しや新たにLPガス機器の導入を考えている方はご参照ください。
目次
プロパンガスは危ない?
「ガスは危ない」というイメージをお持ちの方もいるかと思います。
一方で都市ガスは、気体のまま地下の導管を通して輸送され、そのまま各供給場所で使用されます。
さらにガスに関する重要な注意として、火災があります。機器によっては直接「火」を扱うため、着衣着火や周囲への引火に気を付けなければなりません。
そのように考えると、十分に注意しなければ「ガスは危険」というのは間違いないでしょう。
皆さんは、ガスが漏れてしまった際の対応方法をご存知でしょうか?プロパンガスと都市ガスでは、ガス漏れの際の対応方法が異なります。ご存知ない方は、ガス漏れ時の対応方法をご確認ください。
プロパンガス事故件数
それでは、実際にガスに関する事故件数は多いのでしょうか?
図は、経済産業省が発表している1967年以降のLPガスに関する事故件数と死亡者・負傷者数の推移です。
表を見ると、1979年をピークに事故件数と負傷者数が激減しているのがおわかりいただけるかと思います。
その後、ボンベを設置するだけでガスを使用できるLPガスは、急速に全国へ普及することになりました。
安全性が確保されないまま普及を広めたプロパンガスの事故件数が、ピークに達したのが1979年頃だったのです。
詳しい安全化への経緯は、プロパンガスの解説に記述していますが、その後法整備や器具の安全化が進められ、近年では事故件数が年間200件前後に落ち着いています。
LPガスの事故による死傷者数
負傷者数に関しては、近年は50人に至っておらず、2021年は20人という結果です。
死亡者数に関しては、近年は5人未満で2016年には0人、2021年は1人という結果になっています。
昔からのイメージをお持ちの方は「ガスは危ない」という認識かもしれませんが、近年においては安全性が格段に向上しています。
少なくとも数値上では、「プロパンガスが危険」ということであれば、「車を運転したり、外を歩いたりするのは、その何倍も危険」という認識になるでしょう。
取り扱いに注意する必要があるのは間違いありませんが、「プロパンガスを使う=とても危険」ということは、まったくないのです。
電気の方が安全なのか?
「ガスは危ないからオール電化にする」という声は少なくありません。
特にお年寄りの家庭などでは「ガスは危ないから電力を選択する」お宅も多いようです。
実際にオール電化は、ガスよりも安全なのでしょうか?
また死傷事故が合計で3件、そのうち死亡事故が1件という結果になっています。
この事故件数は、「オール電化のお宅」に限定して発生したものではなく、電気に関する事故の統計ですのでご注意ください。
電気事故は「感電」が多い
電気を使用することによる事故が、ガスと同様に毎年発生していて、死亡事故も皆無ではありません。
電気に関しては、特に感電に気を付ける必要があります。死傷事故に関しては、感電に関連するものが多くを占めています。
つまりガスも電気も取り扱いを間違えると死亡事故に繋がる可能性があることは同じなのです。
従って、オール電化を採用することによる安全性のメリットとしては、「ガス関連の事故が起こらない点」と捉えることができるでしょう。
電気関連の事故件数が増加傾向なので注意が必要ですが、オール電化では「ガス事故が起こらない」ので、その分安全性が高いと考えられるでしょう。
火災件数
ガスと電気を比べる上で注目すべきなのは、火災の件数です。
ガスの漏えい火災・漏えい爆発件数が年間50件前後であるのに対し、電気火災事故は2020年に1件に留まっています。
しかしガスの漏えいに起因する火災や爆発、それに伴う負傷に関しては、毎年ある程度の確率で発生しています。
この数字はプロパンガスだけではなく、都市ガスやカセットコンロも含まれている上、軽微な火災も含まれているのですが、この件数の多さは見過ごせません。(下記のガスコンロの項目で詳しく解説しています。)
オール電化にすることにより、ガスコンロに起因する火災が発生する可能性を排除することができるメリットがあると考えられます。
引火などがどうしても心配という方は、オール電化という選択肢もあるでしょう。
ただオール電化は、確かに安全というメリットがあるのですが、安全性以外の点においていくつかのデメリットがあります。
オール電化のデメリット
- 費用
- 火力
- 緊急時
詳しくはエネルギーの比較の記事に記載していますが、宅内のエネルギーを電力のみに統一することは、一定のリスクを伴います。
このウェブサイトは、プロパンガスの契約を取り扱っていますが「給湯をオール電化からプロパンガスに変更したい」というご相談を非常に多くいただきます。
動機は「エコキュートが壊れてしまい、修理や交換が高額であるため」という理由がほとんどです。
オール電化の導入を考えている方は、長い目で見た費用面について十分に検討しておくことをお勧めしたいと思います。
取り扱いに注意が必要なガス機器
ここまでガス事故に関する情報を中心に記載しました。
現在販売されているガス機器に関しては、ガス漏れ検知など事故を未然に防ぐ安全装置が付随しています。
使い方の間違いがなければ、一般的にはガス事故というのは起こらないようになっているのです。
もしも宅内に設置されているガス機器に安全装置が装備されていない場合、供給する事業者がガス漏れ警報器を設置しなければならないと法律で義務付けられています。
ただ、たとえ警報器が設置されていたとしても、事故を未然に防ぐわけではありませんので、安全性が確保されているとはとても言えません。
またこれはどのエネルギーにも共通していますが、気の緩みによる事故は機器の進化により防ぐことはできないものもあります。
以下、宅内で一般的に利用されているガス機器について解説します。
ガスコンロ
屋内に設置するガス機器はいくつかあるのですが、代表格としてはコンロが挙げられます。
かつては、コンロの消し忘れなどが原因でガスが不完全燃焼を起こす事故が多発していました。
ガスコンロは、大きく
- ビルトインコンロ
- テーブルコンロ
- カセットコンロ
の3種類に分けられます。
この3つは、「直接火を扱う」という点で共通しています。
扱う際には、着衣着火(衣服に火が移る)や周辺の可燃物に着火することに、十分に注意しなければなりません。
ガスコンロに起因する事故件数
図の通り、2020年(令和2年)のガスコンロに起因する火災件数は2359件となっています。
件数には軽微な火災も含まれているのですが「温めすぎ」や「消し忘れ」「着衣着火」など、ガスコンロからの出火には、十分にご注意ください。
※上記の火災件数は、プロパンガスに限ったものではなく、都市ガスやカセットコンロも含まれています。
2008年に「調理油過熱防止装置及び立ち消え安全装置」の装備が法律により義務付けられたのです。
参照:経済産業省・ガスコンロの基準改正
それ以前は、メーカーの努力義務の面が強かった安全装置装備に関して、法令で義務化することにより火災件数が大幅に減少することになります。
法令の整備により、消し忘れや温めすぎによる火災や、不完全燃焼による一酸化炭素の発生を未然に防ぐことができるようになりました。2008年頃まで年間5000件ほど発生していたガスコンロによる火災が、現在では半減しています。
PSLPGマーク
定められた安全基準をクリアしたガス機器には、PSLPGマークが表示されています。
これはカセットコンロも含めたガスコンロのみではなく、ストーブや給湯器など一般的に使用されるガス機器すべてに表示されています。
かなり以前のタイプのコンロでPSLPGマークが付いていない機種をお使いの方は、お早めに新しい機器への買い替えをお勧めいたします。
カセットガスコンロ
便利に持ち運ぶことができるカセットコンロに関しては、近年でも爆発などの事故が多発しています。取り扱う際には、十分に注意を払いましょう。
カセットコンロは、ガス会社と契約を締結して保安管理を受けるものではないので、古い機種であったとしてもガス漏れ警報器の設置義務がありません。
同時にどこへでも持ち運びができるため、使用に関しては自己責任になってしまいます。
こちらはカセットコンロ販売の大手イワタニの説明書です。⇒達人スリムプラス取扱説明書
ガスファンヒーター・ガスストーブ
ガスの暖房は、ガスファンヒーターやガスストーブがあります。
ガス暖房に関しては、接続さえしっかりとしていれば、一般的にガスが漏れることはありません。
注意点としては、人や物などを近づけ過ぎないようにしましょう。他の暖房と同じく、引火や火傷の危険性があります。
ストーブに限ると、図の通りガスよりも電気や石油の方が火災による死者数が多いという統計です。
またカセットタイプのガスストーブも発売されていますが、コンロと同じくボンベの温めすぎに注意です。
屋内設置型ガス給湯器
屋内型のガス給湯器は、キッチンまたは風呂場で使用するものです。
現在では、屋外設置の給湯器が主流ですが、屋内設置型ガス給湯器は現在でも発売されています。
比較的新しい機種をご利用でしたら、不完全燃焼防止装置が必ず付いていますので、安心して使用することができるでしょう。
しかし不完全燃焼を防止する機能(自動的に停止する機能)が付いていない機種をご利用のお宅は、十分に注意する必要があります。
参照:定期設備点検の解説
バランス釜
バランス釜は、図の通り浴槽と並べて設置する形のガス風呂釜で、正式にはバランス型風呂釜という名称です。
近年では、新築物件にバランス釜が採用されることはなくなったのですが、築年数が古い建物では未だ使用されています。
新しいタイプのバランス釜であれば、屋外に伸びた配管から空気を取り入れるタイプですので、基本的に危険は少ないといえるでしょう。また上述したPSLPGマークが付いている機器であれば、安全装置が付いているので安心です。
他のガス機器と同じく「排気が問題なくなされているかどうか」に注意すれば良いでしょう。
なぜなら、浴槽のスペースを圧迫してしまうバランス釜は、近年では不人気であるため、故障などに伴い屋外設置の給湯器に交換するオーナーが多いからです。
持ち家の方は、ご自身が把握しているかと思いますが、PSLPGマークが付いているかが目安になります。旧式タイプのバランス釜を使用しているお宅は、交換を考えることをお勧めいたします。
またバランス釜は、操作が複雑ということもあり、点火不良を起こすことも少なくありません。どちらにしても取り扱いには十分に注意しましょう。
CF釜は危険
CF釜は、バランス釜よりもさらに旧型の風呂で、浴室内に上向きの煙突が設置されているタイプの風呂釜です。建物の外観でも浴室から排気用の煙突が出ているのがわかります。
CF釜を使用しているお宅は、非常に危険です。
CF釜も屋外から空気を取り入れている点ではバランス釜と同様なのですが、排気の面で危険があります。
例えば天候の影響や煙突内の詰まりなどが原因で、煙突からの排気がうまくできず、逆流することが起こり得ます。
もしも、現状でCF釜を使用しているお宅に住んでいる方は、できる限り早めに外付け型給湯器に交換することをお勧めいたします。
ガス事故についてのQ&A
都市ガスと比べて、プロパンガスは危険ですか?
どちらのガスも取り扱いには注意が必要ですが、適切に使用すれば安全です。プロパンガスの方が危ないということはありません。
プロパンガスの死亡事故は、どれくらい起こっているのですか?
近年、プロパンガスによる死亡事故は、ほとんど発生していません。プロパンガス事故の死者数は、年間で1~3人程度で0人のこともあります。
プロパンガスの事故が減少している理由は何ですか?
安全対策に対する法整備やガス機器の進化により、近年ではプロパンガスに関連する事故が大幅に減少しています。最新のガス機器は安全性が高まっています。
ガス事故の原因は何ですか?
ガス事故の原因は、使用者による過失がほとんどを占めています。特に「消し忘れ」や「周囲への引火」が主な要因です。近年では、ガス機器の発達により機器の不備による事故は、ほとんど起こっていません。使用方法さえ間違えなければ、ガス事故が起こる可能性は極めて低いと言えます。
オール電化の方がガスよりも安全ですか?
「ガスを使わない」という点において、オール電化であればガス事故は発生しません。ただ電気による事故に注意する必要があるほか、コスト面で不利になる可能性があります。
カセットコンロは危険ですか?
カセットコンロによる爆発事故は、近年でも後を絶ちません。使用前に取扱説明書を確認し、使用方法を厳守しましょう。事故などのトラブルが発生した際に、自身の責任になる可能性が高いことにも注意が必要です。
この記事は、私が作成しました。
静岡県出身。エネルギー業界に10年以上携わり、特にプロパンガスや都市ガス、電力を専門にしています。またウェブサイトや記事も自身で作成します。ご意見や感想、指摘などありましたら、気軽にお寄せください。⇒著者情報