資源エネルギー庁は、2018年末に実施したLPガス取引適正化・料金透明化に関する調査結果を発表しました。これにより集合住宅におけるLPガス料金の現状が明らかになっています。
LPガス業界では、建物所有者(物件オーナー)に対して給湯器などの設備費用をガス会社が負担するということが慣習的に行われています。
つまり本来オーナーが負担するはずの建物設備である給湯器、場合によってはエアコンやユニットバスなどの交換・修繕費用をガス会社が負担するのです。
オーナーとしては、本来自身が負担するべき費用を軽減できるというメリットがあり、ガス会社にとっては設備費用を負担する代わりに複数の顧客を安定して持つことができます。
問題となっているのは入居者のガス料金です。
ガス会社としては設備の費用を負担している分の支出を、入居者に対するガス料金で補うというのが一般的となっています。そのため集合住宅のLPガス料金は戸建住宅よりも割高になる傾向にあるのです。
さらに、「オーナーに対する設備投資分がガス料金に上乗せされている」ことが入居者に対して伝えられていないことも多いため、ガス料金に対する不満やLPガスに対する不透明感を増長させてしまっているというのが実態です。
調査によると、設備費をガス料金に転嫁している集合住宅は全体の29%、そのうち転嫁していることを入居者に伝えていない割合は52%となっています。
入居者に対する調査では、「ガス料金が高い」と感じている割合が全体の68%にのぼっています。
つまり全体の3分の1程度のLPガス集合住宅で入居者のガス料金に対する転嫁が行われており、そのうち半数の入居者には設備投資によりガス料金が高くなっていることが伝えられていないということになります。
また転嫁されている物件が3分の1にも関わらず、68%の入居者が「ガス料金が高い」と感じていることも注目するべきでしょう。転嫁が行われていない物件でも「LPガスは高い」と感じている入居者が多いという認識になります。
実際にLPガス料金は法律による規制がなされていないことから、事業者側が自由に決めることが可能です。これは戸建て住宅でも同様ですが、特に理由がないにも関わらず高額な料金設定を行う事業者もあることから、上記のような調査結果になったと推測されます。
つまり、設備投資がされていない集合住宅に対しても高めの料金設定にしている事業者が未だ多いと考えて良いでしょう。
入居者の回答では、設備費用によるガス料金への転嫁を「認識している」割合が13%、「転嫁されているかわからない」が47%、「転嫁の説明を受けていない」が32%となっています。ほとんどの方が詳しい説明を受けていないことがわかります。
LPガスは、都市ガスと異なりそれぞれの部屋で別のガス会社を選ぶことができないサービスです。建物全体での契約となるため、入居者の意思のみでは事業者を切り替えることができないのです。オーナーの意思で他の居住者も含めて変更する必要があり、簡単に切り替えることはできないようになっています。
ガス料金が高いと感じても自身の意思のみでは切り替えができないため、悩んでいる方は多いでしょう。
このことは消費者のLPガス離れにもつながってしまうため、LPガス業界全体として解決しなければならない問題といえます。
2017年には「取引適正化ガイドライン」が改訂されるなど、行政主導による改革もはじまっていますが、調査結果を見る限りでは完全な透明化にはまだまだ年月がかかると推測されます。
LPガスが高いと感じている方は一度、管理会社やオーナー様に相談されることをお勧めいたします。