国際エネルギー機関(IEA)は、2022年版の「ワールド・エネルギー・アウトルック(WEO)」(世界エネルギー展望)を発表しました。
現在のエネルギー危機の原因や今後起こり得るシナリオを分析し、気候変動対応、エネルギーセキュリティ、経済性を同時に実現するための政策や投資の方向性について、10のガイドラインを提示しました。
ロシアのウクライナ侵攻で加速化したエネルギー危機は、1970年代の石油ショックと似ていますが、今回はあらゆるエネルギーに危機が及ぶ点で異なり、包括的対応が必要としています。
根本原因は、
- 2010年代半ばに上流投資が低迷したこと
- パリ協定締結後もクリーンエネルギー投資が伸びなかったこと
- ロシアによるクリミア併合後も欧州がロシア依存をへらさなかったこと
と指摘しました。
天然ガスは、需要の伸びが大幅に鈍化し、「公表政策シナリオ」の場合2021~2030年の増分は5%未満です。欧州・アジアの価格は、数年間高水準で推移するとしています。
10の指針については、
- クリーンエネルギー技術への投資拡大と化石燃料の縮小
- 需要側の取り組み後押しによるエネルギー効率改善
- 電力の季節変動対応のためのガス火力発電所など、既存インフラを最大限活用すべきこと
- 貧しい地域社会にも活力を与える新しいエネルギー経済への転換
- 新興国や発展途上国の資本コストを引き下げるための協働
などを指摘しました。
また資源国には、再生可能エネルギー、水素、二酸化炭素回収・利用・貯留などの活用により、トランジションへの備えを強化することを求めました。
気候変動による災害等に対応したエネルギーインフラの強靭化や、エネルギーを十分に利用できない貧困層へのサポート強化の必要性も指摘しています。
IEAは、オイルショック後の1974年に、当時のキッシンジャー米国務長官の提唱により設立された機関、事務局はパリにあります。
現在は、日本やアメリカを含む、30か国がメンバーとなっています。
石油やLNGなどほとんどの資源を輸入に頼っている日本にとってIEAは、エネルギー安全保障上で非常に重要であると位置づけられています。
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