プロパンガス料金は、一般的に「基本料金」と「従量料金」で構成されています。
- 基本料金は、ガスを使用していなかったとしても固定で支払う料金
- 従量料金は、ガスを使用した分に対して支払う料金
従量料金は、「1㎥あたりの単価×ガス使用量」で計算されます。
1㎥あたりの単価を決める際、プロパンガス会社によって、大きく分けて2種類の方法があります。
一つが「固定単価」、もう一つが「変動単価」です。変動単価は、「原料費調整制度」と呼ばれる計算方式で、都市ガス会社で広く採用されている制度。
事業者によって、固定単価を採用している企業、原料費調整制度を採用している企業、両方に対応している企業があります。
目次
固定単価
固定単価は、多くのガス会社で採用されている単価制度です。
固定単価制度は、事業者にとって単価を決めやすい利点があるため、中小のプロパンガス事業者にも広く使用されています。
※固定単価というのは、「単価が永続的に上がらない」という意味ではありません。
単価が変動しない
固定単価は、その名の通り1㎥あたりの単価が固定されています。
例えばそのお宅に適用される単価が400円であったとして、その次の月以降も値上げされない限りは、その単価が固定で継続されます。
10㎥×400円=4000円
固定単価のメリット
固定単価を採用するメリットは様々がありますが、代表的なものとしては以下の点が挙げられます。
消費者にとって単価がわかりやすい
消費者にとって固定単価は、わかりやすいというメリットがあります。
例えばガス代が高くて他社への変更を検討している消費者が、現在と切り替え後の単価を比べた際、簡単に計算することができます。
また固定単価の値上げがあった際も同様に、差額をすぐに計算できるのも利点のひとつです。
ガス会社は臨機応変な対応ができる
固定単価は、ガス会社にとってもメリットがあります。
まず固定単価は、原料費調整のように計算する手間がありませんので、中小の企業でも導入しやすいという利点があります。
料金プランの使い分けがプロパンガス業界の不透明な部分でもあるのですが、現状ではこのような単価の使い分けが行われています。
固定単価のデメリット
固定単価は、事業者と消費者双方にメリットがある一方で、大きなデメリットもあります。
固定単価の値上げ
プロパンガスは自由料金制ですので、永続的に単価が固定されることはありません。
特に固定単価の場合には、事業者による差はあるものの、値上げが比較的頻繁にあることを特徴としています。
自動的に値下げすることはない
固定単価が採用されているお宅では、基本的に「何もしなくても」単価が値下がりすることはありません。
つまり上がったら上がりっぱなしということです。
同じガス会社と長期間契約しているお宅では、特に注意していただきたい部分です。
定期的に料金を見直す機会をつくっていただき、料金交渉や事業者の変更など適切な対処をすることをお勧めしています。
ガス会社切り替えの相談は、当社で承っています。
単価が使い分けられている
メリットの部分で単価の使い分けについて触れましたが、これは同時にデメリットとも捉えることができます。
- 新規で契約するお宅には350円
- 戸建住宅のA宅には500円
- 戸建住宅のB宅には550円
- 集合住宅のC棟には600円
「すべての顧客に対して、同一の固定単価で提供している」プロパンガス会社は、筆者が知る限りありません。
「契約したばかりのお宅」などは、値上げの対象から除外されていることもあるのです。
また値上げする金額も、「30円のお宅」「50円のお宅」など分かれていることも珍しくありません。プロパンガスは、決して公平に単価が決められているのではないため、いびつな料金構造が生まれてしまうのです。
この辺りがプロパンガス業界の闇とも言える部分です。
原料費調整制度(変動単価)
原料費調整制度は、都市ガス事業者で広く採用されている単価の決め方ですが、一部のプロパンガス事業者も採用しています。
似た言葉で「燃料費調整制度」がありますが、こちらは電力業界の用語です。
適用される単価が毎月変わる
原料費調整制度は、原料費や為替レートの変動に応じて、流動的にガス単価を決める制度です。
原料費や為替レートが上昇すると、ガス単価もそれに連動する形で上昇します。逆に下がれば単価も下がるのです。
この「どうすることもできない仕入れ価格の変動」をガス料金の変動に取り入れることで「ガス料金を透明化する」ことが目的です。
原料費調整制度は、主に都市ガス事業者が採用している制度ですが、一部のプロパンガス事業者もこの仕組みを取り入れています。
毎月仕入れ価格を計算して単価に反映する作業が必要になるため、小規模の事業者がこの制度を採用することは難しくなっています。
基準単価と原料費調整額
また原料費と為替レートの変動を計算して導き出された金額を「原料費調整額」と言います。
原料費調整制度では、基準単価をもとに、「4月は原料費調整額+50円」「5月は原料費調整額-40円」のように原料費調整額が差し引きされます。
原料費調整制度の単価表記
仮に基準単価が400円、原料費調整額が+50円、ガスの使用量が10㎥の月は、
10㎥×(400円+50円)=4500円
このように計算されて従量料金が決定されます。
基準単価は一定ではない
基準単価については、特別な決まりがある訳ではないため、金額が各社バラバラです。
例えば基準単価が400円の事業者もあれば、500円のこともあります。統一された金額を基にしているのではないので注意が必要です。
またどれだけ使用しても単価が変わらない企業もあれば、ガスの使用量が増えるほど基準単価が安くなる段階性の料金体系もあります。
- 参照(外部サイト):東京ガス(都市ガス)の料金体系
- 参照(外部サイト):エネアーク関西の料金プラン
原料費調整額もバラバラ
「原料費調整される金額」の計算方法についても各社で異なります。
原料費調整額を導く計算方法が法令などで決められていませんので、各社統一された金額が調整されるのではないことに注意が必要です。
ただ為替レートは、外部情報なのでどの企業に対しても同じです。また原料費についても、仕入れルートにより差があるものの、大きく異なることはないでしょう。
従ってA社は+100円なのにも関わらず、B社は-100円など、全く異なる金額になることはありません。調整額の基本的な方向性は同じです。
一方で都市ガスについては、多くの事業者がホームページ上で原料費調整額の計算方法を公開しています。
参照(外部サイト):東邦ガスの原料費調整額計算式
原料費調整制度のメリット
原料費調整制度を取り入れるのは、為替レートと仕入れ価格を加味して原料費調整を行う必要があるなど手間がかかります。
プロパンガス事業者がこの制度を採用するのには、理由があります。
プロパンガス単価の透明化
原料費調整制度の最大のメリットは、ガス単価が透明化されることです。
そもそも原料費調整制度が日本国内で採用されることになった理由は、ガス料金を透明化することが大きな目的の一つでした。
その流れがあるため、料金透明化を第一とする都市ガス事業者では、原料費調整制度が採用されているのです。
プロパンガス事業者は、原料費調整制度を採用する義務はないのですが、透明化を目指す一部の企業では採用されています。
単価が下がることもある
原料費が上がれば単価も上がってしまうのですが、下がれば単価も自動的に安くなります。
仕入価格に応じて高くなることもあれば、安くなることもあるという公平さが原料費調整制度の利点です。
原料費の増減を単価に反映しやすい
原料費調整制度を採用する事業者のメリットとして、原料費や為替レートの変化を単価に反映しやすい点があります。
固定単価を値上げするには、あらかじめ通知を送った後で実施しなければならないのです。
参照:固定単価の値上げ
原料費が高騰している時期であれば、安い単価で供給しているお宅に対しては赤字になってしまう可能性もあるでしょう。
そのため固定単価の企業は、単価を下げるお宅もあれば、必ず高く設定しているお宅もあるという形でバランスを取っているのです。
原料費調整制度の見方として「ガス事業者の経営を保護する仕組み」と捉えることもできるのです。
原料費調整制度のデメリット
原料費調整制度には、デメリットと捉えられる部分も少なくありません。
特にプロパンガス事業者の原料費調整額は、計算方法が公開されていないこともあり、やや不透明な部分を含んでいるのが実情です。
仕入れ価格が上がる時期は高いまま
輸入価格が上がっている時期には、原料費調整額は高いまま推移し続けることになります。
例えば新型コロナウィルスやロシア・ウクライナ問題などの影響で、2020年頃からLPガスの輸入価格が高騰しました。
この時期、原料費調整額はずっと継続して高いままの金額であったため、顧客に適用される単価も高いまま推移を続けていました。
仮に基準単価が400円だとすると、顧客に適用される単価が700~800円になってしまいます。
単純に顧客が支払うガス料金としては、「とても高い」と言わざるを得ません。原料費調整額も適切な額とは言えないでしょう。
あくまでも一例なのですが、消費者目線から単純に「ガス料金が高いか安いか」で考えると、とても高い料金です。
ガス代が必ずしも安くなるとは限らないのが原料費調整制度のデメリットです。
純粋に「ガス代を安くしたい」と考えるのであれば、固定単価の方が良いと考えることもできるでしょう。
基準単価の値上げ
原料費調整される際の基準となる単価も、固定単価と同じように値上げされる可能性があります。
都市ガスの基準単価が滅多なことでは変動しないのと同様です。
固定単価のように頻繁に値上げされることはありません。
しかし、基準単価の変動方針も事業者により異なるため注意が必要です。
もし原料費調整制度を採用しているプロパンガス会社と契約する際には、「基準単価が変動するのか」を確認することと、契約後に「基準単価の変動通知が来ていないかどうか」をチェックしましょう。
固定単価と原料費調整制度どちらが良いのか
ここまで固定単価と原料費調整制度について解説しました。
実際にどちらが良いのかという点に関しては、消費者それぞれの考え方や事業者によっても異なりますので、断言することはできません。
また固定単価に関しても一部の事業者は、なるべく値上げしないという方針を取っているため十分にお勧めできる企業もあります。
それぞれの方が状況に応じて判断することが大切だといえるでしょう。
当社では、固定単価と原料費調整制度含めて、プロパンガス料金を安くしたいというご相談を承っています。ガス代が高いとお困りの方は、お気軽にご相談ください。
プロパンガス単価についてのQ&A
プロパンガス料金はどのように決まりますか?
一般的にプロパンガスの料金は、基本料金と従量料金の2つの要素で構成されます。基本料金は固定費用で、従量料金は「使用量×単価」で求められます。
固定単価とは何でしょうか?
固定単価とは「1㎥あたりの単価」が毎月変動せずに固定額の単価方式です。料金を計算しやすく、消費者にとってわかりやすいことが特徴です。
変動単価とは何でしょうか?
変動単価とは、原料の輸入価格や為替レートなどの外部要因に連動して、毎月単価を変動する方式です。「原料費調整制度」という名目で、都市ガス事業者に広く採用されていますが、プロパンガスでも取り入れている企業があります。
固定単価と変動単価は、どちらの方が良いですか?
それぞれメリットとデメリットがあるので、一概には言えません。またガス会社によっても取り扱いの有無が分かれています。プロパンガス会社と契約する際に、どのような単価方式なのかを事前に確認することが大切です。
この記事は、私が作成しました。
静岡県出身。エネルギー業界に10年以上携わり、特にプロパンガスや都市ガス、電力を専門にしています。またウェブサイトや記事も自身で作成します。ご意見や感想、指摘などありましたら、気軽にお寄せください。⇒著者情報