このページでは、「プロパンガス会社を変更する際」「新たに契約する際」「解約する際」に、費用がかかるかどうかについて解説します。あわせて制約期間の有無に関しても触れています。
プロパンガス会社を変更する際や、引越しで新たに入居する際に初期費用はかかるのでしょうか?
この記事では「多くのLPガス事業者の通例」を記載しています。プロパンガス事業者は、全国に一万社以上ありますので、例外があり得ることをあらかじめご了承ください。
目次
例外を除いて初期費用は無料
プロパンガスの会社と契約・変更する際、一般的に費用はかかりません。
供給設備はガス会社の持ち物で、これらを用意・交換することは通常無料で行われます。
また契約事務手数料などの名目で初期費用を徴収するサービスも見受けられますが、プロパンガスの契約時には、そのような料金が発生することはありません。
新規契約する際には、必ず供給開始時点検がありますがこちらも無料です。⇒供給開始時点検
LPガスは制約期間を設けない
例えばインターネットや携帯電話の契約などでは、最低利用期間を設けるなどして、解約を制限することがあります。
契約期間中の解約には違約金がかかるため、消費者としては安易に行うことが難しくなってしまいます。事業者側としては、複数年の契約期間を設けることで、顧客の囲い込みを意図しています。
工事費用を割り引く代わりに、長期契約を結ぶのです。
工事に大きな手間がかかったのに、すぐに解約されてしまっては、採算が合わなくなってしまうので当然でしょう。
一方でプロパンガスでは、契約内容に期間が設けられることは通常ありません。
例外を除いてプロパンガスの契約には、制限が盛り込まれることはありません。つまりプロパンガス会社は、いつでも何度でも無料で乗り換えることができるのです。
かつては制約期間が設けられることもあった
以前は、プロパンガスの契約にも制約期間が設けられ、解約に伴う違約金が設定されることがありました。
その他にも、物件オーナーとプロパンガス事業者が長期契約を結び、見返りとして設備の投資を求めるサービスも一般的でした。
現在でも事業者と顧客がお互い同意した上で長期契約を結ぶ事例がゼロではありませんが、数は少なくなっています。
2024年7月の省令改正による長期契約締結の禁止
2024年7月2日にLPガス事業に関わる「液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律施行規則の一部を改正する省令」が施行されました。
この改正は、集合住宅の入居者の環境を改善する内容がメインですが、その中で「LPガス事業者の変更を制限するような条件を付けること」が禁止されています。
つまりガス会社が顧客と契約を結ぶ際、違約金や契約解除料などを設けて、ガス会社の乗り換えを制限することができなくなったのです。
簡単に言うと「長期契約を結んではいけない」ということです。
主に物件オーナーや集合住宅の入居者に向けた改正となっていますが、長期契約中の顧客に関わる部分も含まれています。
⇒改正ガイドラインを見る
※「5ページ目」(3)賃貸集合住宅等のオーナーや消費者等に対する過大な営業行為の制限・イ)LPガス事業者の変更を制限するような条件を付した契約等の締結の禁止を参照
現在では、LPガス事業者が消費者と長期契約を結ぶ(他社への変更を制限する)こと自体が禁止されています。
ガス会社の中には、「消費者との認識が一致しているのであれば、違約金ありの契約を結ぶ方針」の企業もあります。
「法令解釈は各社さまざま」長期契約を結ぶ企業もある
法律の条文やガイドラインは通常、含みを持たせた表現をします。
改正された条文は「設備投資は禁止」「長期契約を結ぶことは禁止」と解釈できるのですが、「正当な理由があれば可能」とも認識できます。
条文の内容をどのように解釈するのかについては、各ガス会社の判断により分かれます。
実際に一部では、「顧客が納得しているのであれば設備投資する。長期契約を結んでも構わない。」という方針のガス会社もあります。
- 設備投資した分、ガス料金に上乗せされること
- 長期契約を結ぶこと
つまり「顧客がしっかりと内容を理解しているのであれば、制約期間を設ける正当な理由として成り立つ」と解釈しているのです。
例外的ですが、事業者の判断によっては、違約金設定付きの長期契約が締結されることもあります。
プロパンガスは気軽に切り替えができる
乗り換えが面倒と思われている方が多いかもしれませんが、手続きは簡単で基本的にお金はかかりません。自由度が高いことが、プロパンガスのひとつのメリットでもあります。
ガス代を少しでも安く抑えられないかとお悩みの方は、積極的に他社への変更を検討しましょう。
初期費用が発生する場合
通常の契約で初期費用はかかりませんが、環境によっては支払いが発生することもあります。
プロパンガス契約時の初期費用は、機器などの設備で必要になることがほとんどです。
新築住宅でガス機器や配管を新設
新築住宅では、ガス機器の購入や設置、さらに配管などを新設しなければなりません。
具体的にどのくらいの金額が必要になるのかは、「何にガスを使うのか」「配管の長さ」など、物件により異なります。
個別の見積もりになりますが、一般的に数十万円は必要になるでしょう。参照:新築住宅のLPガス
中古の戸建住宅で機器などがそのまま使えない
中古住宅を購入して引越しする際によくある事例として
- 給湯器などの機器が故障している
- 機器が安全基準を満たしていない
- ガス配管が老朽化していて修繕が必要
このようなことがあります。
特に長年空き家だったり、築年数が古い物件では注意が必要です。
仮に消費者が「そのまま使えるだろう」と考えていても、ガス会社が「そのまま使っては危険」と判断した際には、交換を勧められるのです。
「給湯器本体を購入する必要がある」「ガス管を交換しなければならない」物件もありますので、できる限り早めに確認することをお勧めいたします。
当社では、中古住宅への開栓予約を承っています。お引越しの方は、日程が決まりましたらお早めに相談ください。
「リース契約」など初期費用を抑える方法
法改正により「制約期間(違約金)を設けてガス会社の変更を制限すること」が難しくなりました。
これは「ガス会社の変更を制限しなければ、長期契約を結んでも良い」とも解釈できます。
該当する手段として、リース契約の締結が挙げられます。
数年間程度の長期契約を結び、期間が満了すればガス機器は自分の物になります。
リース契約は、数年間の制約がある上に途中解約すれば残額を払わなければなりません。
参照(外部サイト):リース契約とは?三井住友銀行
ただリース契約を結んでもガス会社の変更は、制限されません。ガスの供給と機器のリースは関係のない話だからです。
つまりA社とリース契約を結んでいる最中だとしても、ガスの供給はA社からB社に無料で変更できます。
この方法であれば法令に抵触することもなく、初期費用を安く抑えることができます。当社でも「リース契約をしたい」というご要望を承っています。
リースやレンタル契約など、ガス会社によって色々な提案ができるかもしれません。必ずしも初期費用を安く抑える提案ができなくなったのではないのです。
解約時の違約金
ここまで「新たに契約するガス会社」の初期費用について解説しました。
集合物件のオーナーや戸建住宅ガス会社を変更する方は、「解約する側の事業者」へ費用を支払わなければならないケースもあります。
違約金のような解除料金を支払わなければならないことは、いくつかのケースで考えられます。
長期契約中の解約
LPガス事業者と長期契約を結んでいる方が他社に乗り換えるなど、解約する際には違約金を支払わなければなりません。
改正以前に長期契約を結んでいた場合には、その契約は有効です。
金額に関しては、契約内容によって大きく異なりますので、契約書を確認するか契約中のガス会社へ問い合わせましょう。
設備撤去費用などの項目
プロパンガス会社の中には、契約書の中に「設備撤去費用」のような名目で数万円の金額を解約時に求める旨を記載していることがあります。
名目は事業者によっても異なりますが、近畿地方以西ではこのような項目が盛り込まれていることが少なくありません。
つまり、いつ解約したとしても指定された金額を支払わなければならないのです。
撤去する設備は、容器(ボンベ)やメーターなどが該当しますが、供給設備を撤去することに対して数万円の料金を徴収することが妥当であるとは考えにくいでしょう。
このような「設備撤去費用」などの名目で織り込まれる違約金に関しては、業界内の慣習とされているものです。とても良い慣習とは言えません。
関東地方など、事業者間の競争が激しい地域では、このような項目が設定されることは通常ありません。逆に九州などでは、撤去費用を徴収する行為が現在でも一般的です。
撤去費用は負担できる
この撤去費用の金額に関しては、「乗り換え先のガス会社が負担すること」が慣例になっています。
変更先の事業者は、この金額を負担することを加味した上で料金の提案をするのです。
設備撤去費用を変更先のガス会社が負担した場合、そのガス会社との契約内容にも撤去費用の項目が含まれることが一般的です。
変更先のガス会社としては、「一時的に負担した撤去費用を、いつか解約になった際に切り替え先のガス会社から回収する」ことになるのです。
初期費用について(まとめ)
プロパンガス会社と新たに契約する際、一般的には初期費用はかかりません。
ガス機器の老朽化などは、基本的に家主が対応するべき事項ですので、借主としてはそのまま無料で使用開始することができます。
一方で戸建住宅で持ち家である場合には、新築か中古問わず注意が必要です。
新築住宅では、必ずガス機器を購入しなければなりません。
また中古住宅においても、設備が老朽化していないかどうか、できる限り事前に確認しましょう。
預り金
最後にプロパンガス会社と契約する際、保証金のような形で「いくらかのお金をガス会社に預けてください」と求められることがあります。
保証金は、切り替えの方ではなく、新たに入居する方に求められることが通例です。
参照:保証金の解説
問題なく契約を続けていれば解約する際に返してくれるお金なのですが、こちらも最初に必要になる費用としては該当します。
プロパンガスの契約についてのQ&A
プロパンガス契約時に初期費用は必要ですか?
多くの場合、初期費用はかかりません。ただし、戸建住宅へ引越しの場合、物件の状態などによっては費用が発生する可能性があります。
プロパンガス契約時に制約期間は設けられますか?
2024年7月の法改正により、消費者保護の観点から制約期間を設定することが難しくなりました。例外を除いて、制約期間や違約金の設定がされることはありません。
以前に結んだ長期契約期間中にプロパンガス会社を変更することはできますか?
可能です。ただし、残存価格を支払う必要があります。参照:プロパンガス会社と長期契約中の方
プロパンガス会社を選ぶ際のポイントは何ですか?
料金体系、緊急時の対応、契約条件などを比較検討することが重要です。ガスの質は、どの会社でも同じです。
賃貸物件でもプロパンガス会社を変更できますか?
戸建住宅であれば、大家さんの許可を得て変更することができます。集合住宅では、物理的な問題から一部屋だけガス会社を変更することはできません。
プロパンガス契約時に保証金は必要ですか?
ガス会社によって異なりますが、要求される場合があります。特に集合住宅では、求められることが多いでしょう。参照:契約時の保証金
プロパンガス契約書で注意すべき重要な項目は何ですか?
料金体系、契約期間、解約条件、設備の所有権、緊急時の対応などが重要な要素です。契約前に必ず確認しましょう。
新築住宅の場合、プロパンガス会社は自由に選べますか?
はい、2024年7月に省令改正があり、新築住宅でも自由にガス会社を選択できるようになりました。ただし、建築会社が特定のガス会社と提携して、推薦される場合もあるので確認が必要です。
この記事は、私が作成しました。
静岡県出身。エネルギー業界に10年以上携わり、特にプロパンガスや都市ガス、電力を専門にしています。またウェブサイトや記事も自身で作成します。ご意見や感想、指摘などありましたら、気軽にお寄せください。⇒著者情報